アーティストの音楽を深く理解する
セッションプレーヤーの方は、様々な演奏の引き出しをどうやって増やしていくんですか?
扇谷 いろんな音楽が好きなのはもちろん、アーティストの人にこういう感じでやりたいっていわれたときにわかってあげられることが大事。それをすぐに音で、こんな感じって表現してあげるスキルが必要なんです。そのためには聴くだけじゃなくて、その音楽の構造を知っていなければいけません。札幌のバンド時代には、僕と田中義人君*4が主に曲を作っていて、当時流行っていたアシッドジャズや、ファンクなど、とにかくいろんな音楽を研究して演奏していました。しかもオリジナルで。それが今の僕らの引き出しを増やす糧になっていますね。
具体的に扇谷さんが演奏したことのあるアーティストで、西野カナさん、ドリカム、キリンジではどのように違うんでしょうか?
扇谷 どのアーティストさんとご一緒する場合でも大事にしなくてはならない部分は共通しています。それは、彼らの音楽をできるだけ深く理解し、彼らが求めている以上のものを提供するということです。
例えば、カナちゃんの音楽はピアノのメロディで始まる曲が多いんです。だから、どんなに大きな会場でもしっかりとイントロを弾き、導入部分からその曲の世界観をつくってあげること。カナちゃんは、ライブではピアノを拠り所として歌っているようなのでリズムやハーモニーをわかりやすく弾いてあげるようにしていました。
ドリカムは、とにかく美和さんの歌と踊りがすごすぎて神レベルなので、それをさらに盛り上げることですね。ダンサブルな曲ではバンド全体がグルーヴするようリズムを出し、歌とピアノだけのバラードは情感をさらに押し上げられるように気持ちをこめて演奏していました。
キリンジの場合、高樹さんの曲はコードが複雑なのでそのハーモニーを汲み取り表現すること。泰行さんが明確なサウンドイメージを持っているのでそれをできるだけ理解して具現化することでした。
ーーさらに誌面では、オルケスタ・デ・ラ・ルス在籍時のことや、ご自身のアルバムのこと、などもお話されています。続きは、本誌で。
扇谷さんのすばらしい演奏を聴きたい方はぜひこちらのCDで!
『PIANO SONG BOOK』
『from the country』
■プルームレコーズで発売中!
*1 花れん/ル・クプルのギタリスト藤田隆二とのユニット“ブルーハンモック”の作詞・ボーカルとして活動後、ソロアーティストとして活動開始。1stフルアルバム『light butterfly』は高い評価を得た。
*2 イカ天/『三宅裕司のいかすバンド天国』の略。1989年から1990年までTBS系列で放送された勝ち抜きバンド合戦。深夜番組『平成名物TV』の1コーナーで、バンドブームの火付け役となった。
*3 松本圭司/北海道出身のピアニスト/アレンジャー。1998年からT-SQUAREのサポートメンバーとして参加(翌年に正式加入)。T-SQUARE退団後は本田雅人、東儀秀樹、ゴスペラーズ、中島美嘉らアーティストのライヴサポートやアレンジャーとして活躍。2015年9月に通算5枚目のソロ作『Love&Keys』を発表。
*4 田中義人/扇谷さんが札幌時代から組んでいるいるバンド“TOO HIGH”のギタリストであり、Mondo Grossoをはじめ、bird、葉加瀬太郎、さかいゆう、スキマスイッチ、スガシカオなどのセッションプレーヤーのほか、プロデューサー、自身のアルバム制作など多方面で活躍中。
扇谷研人:札幌市生まれ。坂本真綾、西野カナ、平原綾香などの様々なアーティストのコンサートツアーやレコーディング、また音楽監督・バンドマスターとして数々のミュージカルや舞台に携わる。2003年より4年間在籍した日本を代表するサルサバンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスを退団した後ソロアーティストとしての活動を開始。2015年7年ぶりにピアノソロの2ndアルバムをリリース。各方面で高い評価を得ている。カシオペアの野呂一生のソロユニットISSEI NORO INSPIRITSのメンバーでもある。公式サイト